失語症って何?

失語症という言葉。みなさん1度は聞いたことがある言葉だと思いますが、何であるかはっきりとは分からない。そんな方は多いのではないでしょうか。今回は失語症について話していきます。

 

失語症とは

大脳(たいていの人は左脳)には、言葉を受け持っている「言語領域」という部分があります。失語症は、脳梗塞脳出血など脳卒中や、けがなどによって、この「言語領域」が傷ついたため、言葉がうまく使えなくなる状態をいいます。

つまり簡単に言うと、失語症になると、「話す」ことだけでなく、「聞く」「読む」「書く」ことも難しくなるのです。しかし、脳(左脳)の傷ついた場所の違いによって、「聞く」「話す」「読む」「書く」の障害の重なり方や程度は異なり、失語症は次のようなタイプに分類されています。

Q.言葉に関すること以外はどうなるの?
A.重症度にもよりますが、周囲の様子や相手の表情を感じ取るといった「状況理解」「判断力」は保たれます。また、カラオケや将棋等を楽しむなどの「知的活動」、出来事を覚えているといった「記憶力」も保たれることが多いです。

失語症の病型分類

失語症にいろいろなタイプがあります。
まず、脳(左脳)の比較的前の方の部分に障害が起きた場合ですが、このタイプでは、聞いて理解することは比較的よくできるのに、話すことがうまくできず、ぎこちない話し方になります。これには「ブローカー失語」などがあります。
反対に、脳の比較的後ろの部分に障害が起きると、なめらかに話せるものの、言い間違いが多く、聞いて理解することも困難なタイプの失語症になります。「ウェルニッケ失語」などがこのタイプです。
さらに、聞いて理解することはできるのに物の名前が出てこないため、回りくどい話し方になるタイプ(「健忘失語」など)や、「聞く・話す・読む・書く」のすべての言語機能に重度の障害が起きた「全失語」などがあります。

ここからは、失語症を「聞く・話す・読む・書く」の面からみながら、具体的な症状について説明していきます。症状には、どの失語症にも共通してみられるものと、タイプによって特徴的なものがあります。

  • ブローカー失語(運動性失語)
  1. 言葉を聞いて理解する能力:話す能力に比べて障害が軽い
  2. 話す能力:聞いて理解する能力に比べて障害が重い。自分の思うことが話せず、話せてもたどたどしいしゃべり方になる。
  3. 読み書きの能力:仮名に比べ、漢字のほうが能力が保たれる。漢字は正常者の書き誤りにもみられるような、形態の誤りおよび意味的に似た語への置換が過半数を占めるのに対し、仮名文字の誤りの大多数はほかの仮名文字への置換であり、発話時にみられる音韻変化のパターンとよく似ている。【音声的に近い】仮名への置換が圧倒的多数を占める。
  4. その他:ほとんどの人が右片まひを伴う

言葉を聞いて理解する能力:話す能力に比べて障害が重い。聴覚的障がいが顕著

  1. 話す能力:なめらかにしゃべり多弁だが、言い誤り(錯語(さくご))が多いため、聞き手には非常に理解しにくい話し方になる。
  2. 読み書きの能力:一部を除き、仮名に比べ、漢字の能力のほうが保たれる例が多い。
  3. その他:右片まひを伴うことはほとんどない
  • 全失語
  1. 言葉を聞いて理解する能力:相手のいうことはほとんど理解できないが、日常の挨拶や、本人の状態などに関する質問は理解できることもある。
  2. 話す能力:残語(ざんご)程度しか話せなくなる
  3. 読み書きの能力:強く障害される
  4. その他:ほとんどの人が右片まひを伴う
  • 健忘失語
  1. 言葉を聞いて理解する能力:障害が軽く、相手の言うことはよく理解できる
  2. 話す能力:流暢で文法的に比較的正しいことばを話すにもかかわらず、きわだった喚語(かんご)困難があるため内容の空虚な会話になりがち。ものの名前がすぐに出てこない。迂言(うげん)(回りくどい言い方)が多い。
  3. 読み書きの能力:読解や音読は保たれる。書字能力には個人差がある
  • 伝導失語 
  1. 言葉を聞いて理解する能力:比較的保たれている
  2. 話す能力:字性錯語(言葉の一部の言い誤り)が多く、誤りに気づいて言い直そうとするため、発話の流れが妨げられる
  3. 読み書きの能力:漢字より仮名のほうが障害されることが多い
  4. その他:復唱が言語理解に比べ際立って障害される